シラバス情報

授業科目名
芸術論特講2
開講年次
1年
開講年度学期
2025年度前期
単位数
2単位
科目ナンバリング
担当教員名
倉持 充希
担当形態
【科目の位置付け】
この授業の基礎となる科目
西洋美術史
次に履修が望まれる科目
【授業の目的と到達目標】
(授業の目的)
この授業では、美術作品に内包される主題や意味を読解する「図像学(イコノグラフィー)」を取り扱います。絵画芸術を分析するための方法論を知り、作品の主題に関する神話的・宗教的・文学的典拠を学びます。西洋美術の作品の意味内容を読解し、個々の作品について自らの言葉で記述できるようになることを目的とします。

(受講生の到達目標)
到達目標1:図像学に関する知識を身につけ、視覚芸術の読解手法を学ぶ
到達目標2:作品に対して美術史学的観点からの観察および分析を加え、自身の言葉で記述する
到達目標3: 古代から近現代に至るまでの広い範囲の作品を図像学という観点から概観することで、西洋美術全体に対する理解を深める
【授業の概要】
第一回の授業で図像学の概要を説明したのち、第二回以降では具体的な作例を取り上げ、作品に接しながら学びます。また、授業内では実際に作品読解を行い、発表・議論をとおして理解を深めます。
【授業計画と授業の方法】
第1回      オリエンテーション:図像学の概要
図像学の概要について学びます。受講上の注意や成績評価などについて詳しく説明します。

第2回      ギリシア・ローマ神話Ⅰ
アポロ、ユピテル、ユノをはじめとしたギリシア・ローマ神話に登場する人物の図像について学びます。

第3回      ギリシア・ローマ神話Ⅱ
バッカス、マルス、クピドなどのギリシア・ローマ神話に登場する人物の図像や『変身物語』について学びます。

第4回      歴史物語
古代史に取材した作品について学びます。

第5回      旧約聖書Ⅰ
『創世記』における「天地創造」、「アダムとエヴァ」、「大洪水」、「バベルの塔」などの代表的な場面の表現を学びます。

第6回      旧約聖書Ⅱ
『出エジプト記』の表現を、モーセの表象を中心に学びます。また、神を表象する際の制約やイコノクラスムについても着目します。

第7回      新約聖書Ⅰ
イエスの生涯を描いた作品を学びます。また、キリスト教美術が担ってきた機能についても考察します。

第8回      新約聖書Ⅱ
新約聖書のうち、「受胎告知」、「聖母の死」、「無原罪の御宿り」などのマリアに関係する表現を学びます。また、諸聖人のアトリビュートにも着目します。

第9回      寓意画・擬人像
寓意画および擬人像の読み解きを学びます。

第10回     風俗画
17世紀オランダの作例を出発点とし、風俗画に隠された意味を読み解きます。

第11回     静物画
静物画の読み解きを学びます。

第12回     女性の表象Ⅰ
ウェヌス、ミネルヴァ、ディアナなどの女性の神々の表象が美術史上において多様に発展する様を概観します。

第13回     女性の表象Ⅱ
「良い女」としてのマリア表象と、多様な「悪い女」の表象を比較しながら学びます。また、ファム・ファタルのような近代特有の女性表象にも着目します。

第14回     政治と美術
政治的な背景のもと制作された美術作品の読解手法を学びます。

第15回     近代における図像学
都市や労働といった近代以降に新たに登場した主題を挙げながら、伝統的な図像学からの影響を指摘します。

第16回   復習と論述試験
これまでの内容を総括し、試験を行います。

(授業の方法)
パワーポイントで図版を提示しながら講義を行います。また、授業内では小課題として実際に絵画作品の読み解きに挑戦し、それに基づいて議論を行います。

テキスト・参考書
(テキスト)教科書は使用しません。
(参考書)
『西洋絵画の主題物語(1,聖書編/2,神話編)』諸川春樹監修、美術出版社、1997年。
ルーロフ・ファン・ストラーテン『イコノグラフィー入門』、 鯨井秀伸訳、ブリュッケ、2002年
ジェイムズ・ホール『西洋美術解読事典』高橋達史他訳、河出書房新社、2004年。
授業時間外の学修
図書館等で閲覧できる展覧会カタログやカタログ・レゾネ、各地で開催される展覧会、美術館訪問などを通して、多くの作品に触れること。授業で扱った書物に目を通し、作品への理解を深めること。

(事前学習)授業内で指定する文学作品や絵画作品について事前調査を行ってください。授業時にこれに関する発言を求めます
(事後学習)授業内容と関連する作品を自分で探し、分析を行います。
それぞれ60分程度
成績評価の方法と基準
(成績評価の方法)
授業への積極的な参加と授業内小課題:60%
最終時限の論述試験:40%

(成績評価の基準)
到達目標1:課題や授業内の発言において、美術史学(図像学)に関する正確な知識や手法を適用できる。
到達目標2:作品に関する積極的な議論を通して、作品調査・報告の手法を身につけ、他者の意見に耳を傾けながら自身の考えを伝えることができる。
到達目標3:美術史学的観点を理解したうえで多角的な視点から作品を観察し、芸術的な視野を広げる意欲がある。
備  考
担当教員の実務経験の有無
実務経験の具体的内容