シラバス情報

授業科目名
外国書講読2
開講年次
2年
開講年度学期
2025年度後期
単位数
2.00単位
科目ナンバリング
E-CS-206L
担当教員名
林 直樹
担当形態
単独
【科目の位置付け】
この授業の基礎となる科目
次に履修が望まれる科目
【授業の目的と到達目標】
【目的】
(1)英語による専門的論説に触れることで英書に対する抵抗感を払拭し、類書を自ら読む姿勢を習慣づける。
(2)定評ある著者による最新の入門学術書を通じて、当該分野の研究が持つ現代的意義を理解する。
【到達目標】
(1)英文の論理(文章構成法)に習熟する。
(2)量よりも質、速さよりも深さを念頭に置き、文脈を精確に把握することができる。
【授業の概要】
テキストの著者ロバート・スキデルスキーは経済学者ケインズ(John Maynard Keynes)の伝記的研究で知られる経済史家である。現在、男爵としてイギリス貴族院議員も務める。最新の邦訳として上下二巻本のスキデルスキー『ケインズ1883-1946:経済学者、思想家、ステーツマン』(村井章子訳、東洋経済新報社、2023年)が出版されており、日本でも一定の評判を勝ち得ている。この授業では、スキデルスキー自身がコンパクトにまとめ直したケインズ伝をテキストに用いる。

今も昔もケインズの言動と政策には賛否両論が多い。それは「五人の経済学者が集まれば六つの意見が提示される。うち二つがケインズのものである」と言われるほど融通無碍、時には無節操に見えるほど柔軟な意見をひねり出すケインズの知性ゆえのことだろう。誇り高すぎるとも言える一面や、直観に走りすぎて他を置いてけぼりにする性格、そして芸術に入れ込むあまり本業であるべき経済学をアマチュア仕事のように見せたこと。ケインズにはこうした明らかな弱点と言える顔があると同時に、それが逆説的に強みにも魅力にもなっていた。したがって、この人物と付き合った人々は、どのような折にどう接触するかに応じて、それぞれに賞賛や非難の証言を残したのである。

確率(蓋然性)論を得意としたケインズは、「経済学者は文明の預託者ではなく、文明の可能性(possibilities of civilisation)の預託者である」という名言も残した。毀誉褒貶はあろうと間違いなく最大のインフルエンサーの一人であり続けているこの思想家の経済経営哲学と実践のエッセンスを、この授業を通じてつかみ取ることができればと考えている。
【授業計画と授業の方法】
第 1回 Introduction: The Man and Economist (1)【講義&演習】
第 2回 Introduction: The Man and Economist (2)【講義&演習】
第 3回 The Life【講義&演習】
第 4回 Keynes's Philosophy of Practice【講義&演習】
第 5回 The Monetary Reformer【講義&演習】
第 6回 The General Theory (1)【講義&演習】
第 7回 The General Theory (2)【講義&演習】
第 8回 Mid-term Test【課題】
第 9回 Economic Statesmanship (1)【講義&演習】
第10回 Economic Statesmanship (2)【講義&演習】
第11回 Keynes's Legacy (1)【講義&演習】
第12回 Keynes's Legacy (2)【講義&演習】
第13回 Epilogue: The View from 2010 (1)【講義&演習】
第14回 Epilogue: The View from 2010 (2)【講義&演習】
第15回 Final Test【課題】

内容はテキストに準拠するが、単元を前後させる場合や割愛する場合もある。また、教員が授業レジュメを作成して配布する。
まずイントロダクション(概観)とエピローグ(現代的展望)を読んでから、時間の許す範囲で本論を読み進める予定である。
なお、前半のまとめとして中間試験を、後半のまとめとして最終試験を配置する。
テキスト・参考書
Robert Skidelsky, "Keynes: A Very Short Introduction" (OUP, 2010)
授業時間外の学修
(事前学修)
レジュメの該当範囲にあらかじめ目を通しておくこと。
(事後学修)
単語の意味だけでなく英文の文脈を正しくつかみ取るために、よく復習すること。
成績評価の方法と基準
・中間試験50%、最終試験50%の合算で評価する。
・試験では、上述した到達目標に照らして満足のいく水準に到達しているかどうかを確認することに重きを置く。
備  考
Teamsで資料を共有しながら、対面で授業を進めていきます。通常の演習以上に少人数になるでしょうから、個別指導に近い環境でじっくり取り組みたい人にお薦めです。
担当教員の実務経験の有無
実務経験の具体的内容