シラバス情報

授業科目名
社会思想史
開講年次
1年
開講年度学期
2023年度前期
単位数
2.00単位
科目ナンバリング
G-SS-122L
担当教員名
林 直樹
担当形態
単独
【科目の位置付け】
この授業の基礎となる科目
次に履修が望まれる科目
経済史、経済学史
【授業の目的と到達目標】
【授業の目的】
(1)近代啓蒙思想を、哲学、宗教学、法学、政治学、経済学、さらにはメディア論の諸見地から総合的に把握する。
(2)近代社会との比較に基づいて現代社会とはどのような社会かを理解するため、思想の発展と深化の歴史を知る。
【受講生の到達目標】
(1)百科全書の時代にふさわしい複合的知識を領域別に整序するとともに、時系列に沿って配置することができる。
(2)過去を深く理解し、歴史の中の問題を現代のそれとして批判的に再構成する思考力を向上させることができる。
【授業の概要】
 社会思想史とは、ヨーロッパ起源の「近代社会」を支える世界観について、歴史的見地から考察する学問である。
 近代思想の中心には啓蒙思想がある。イングランドのジョン・ロック、スコットランドのデイヴィッド・ヒューム、ドイツ(プロイセン)のイマヌエル・カントがその中心人物とされるが、そこに、20世紀の経済学者J・M・ケインズが高く評価したバーナード・マンデヴィル、「経済学の父」アダム・スミス、『寛容論』の著者ヴォルテール(アルーエ)などの名だたる思想家を次々に加えても語り尽くせないほどに、啓蒙の世界は奥深く、また懐が広い。この21世紀において啓蒙は「依然として問題(重要)」と唱える哲学者や歴史家も少なくなく、啓蒙は現代思想のインスピレーションの源泉として引き続き注目を浴び続けている、思想界の大御所のような存在と言ってよい。
 この授業では、啓蒙研究の第一人者とされるケンブリッジ大学名誉教授ロバートソンの著書をテキストとして、啓蒙思想の豊かさと、同時にその限界について考察する。啓蒙研究の重要性にもかかわらず、啓蒙を過度に今日的なものとして眺めることにロバートソンは批判的である。それはなぜかについても、この授業を通じて考えてみたい。
【授業計画と授業の方法】
第 1回 ガイダンス【講義&課題】
第 2回 啓蒙:同時代の定義【講義&課題】
第 3回 啓蒙:歴史的再構成【講義&課題】
第 4回 宗教との関わり:17世紀における自然宗教と啓示宗教の探求【講義&課題】
第 5回 宗教との関わり:初期啓蒙【講義&課題】
第 6回 宗教との関わり:寛容の擁護論【講義&課題】
第 7回 境遇の改善:道徳哲学と社交性【講義&課題】
第 8回 境遇の改善:ルソー【講義&課題】
第 9回 境遇の改善:経済学【講義&課題】
第10回 公衆を啓蒙する:公共圏【講義&課題】
第11回 公衆を啓蒙する:印刷文化【講義&課題】
第12回 公衆を啓蒙する:啓蒙と政府【講義&課題】
第13回 哲学と歴史の中の啓蒙:哲学者の啓蒙【講義&課題】
第14回 哲学と歴史の中の啓蒙:歴史家の応答【講義&課題】
第15回 まとめ【講義&課題】

 テキストに沿って進める(2023年刊行『啓蒙思想の百科事典』は副読本としてお薦め。少し高価なので、図書館に置かれているものを参照するとよい)。ただし教員作成のレジュメを毎回配布し、テキストにない補足事項を含め、授業の進行上必要な情報はそちらに掲載する。進行具合に応じて多少は上記スケジュールから乖離する場合があるが、最終的には全範囲をカバーする予定である。
 なお、「課題」とあるのはコメントシート提出を意味する。授業内容を読み/聞き取り、理解しているかを確認するための小テスト的意味合いを帯びたものである。下記「授業時間外の学修」「成績評価の方法と基準」も参照のこと。
テキスト・参考書
(テキスト)
ジョン・ロバートソン『啓蒙とはなにか:忘却された〈光〉の哲学』白水社(2019年)
(参考書)
日本18世紀学会編『啓蒙思想の百科事典』丸善出版(2023年)
授業時間外の学修
(事前学修)
テキストとレジュメの当該範囲に、あらかじめ目を通しておくことが望ましい。
(事後学修)
コメントシートに取り組むことを通じて復習に努めること。また可能であれば、副読本の事典や、授業内で紹介した古典そのものを図書館等で手に取り、実際に読んでみることが望ましい。
成績評価の方法と基準
・学期末定期試験(70%)の結果にコメントシート(30%)の提出状況を加味し、上記到達目標に照らして評価する。
・コメントシートには毎回2点を上限として付与し、全15回分の提出をもって30点と見なす。
・定期試験は主として授業内容の理解度を問うものとするが、得られた知識を素材としながら、自らの観点で問題を立て、思考し、主張を導き出す論理的思考力を測る問いも用意する。
備  考
 資料共有にはTeamsを使います。レジュメをプリントアウトしたうえでPCまたはスマホとともに持参し、手もとで画面が見える状態で受講することが望ましいです。
 復習に活用できるように毎回の録画も用意します。このオンライン時代においてオンタイムで完結させる授業形態が必ずしも望ましいとは限りませんから、コメントシートの提出締切は毎回の授業から1週間後とし、余裕を持って回答してもらえるように措置します。
担当教員の実務経験の有無
実務経験の具体的内容