教員名 : 林 直樹
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授業科目名
基礎演習1
開講年次
1年
開講年度学期
2020年度前期
単位数
2.00単位
科目ナンバリング
E-CS-101S
担当教員名
林 直樹
担当形態
単独
【科目の位置付け】
この授業の基礎となる科目
次に履修が望まれる科目
【授業の目的と到達目標】
(1)テキストを読みこなし、内容を的確に要約できるようになるとともに、問題を自ら発見できるようになる。
(2)プレゼンテーションやディスカッションに必要な諸技能を習得する。 【授業の概要】
『ガリヴァー旅行記』の著者スウィフトのことを、彼をよく知る同時代人の一人、有名俳優のシェリダンが次のように評している(言葉はそのままではないが、ニュアンスを伝えると次のようになる)。「彼は最高度に善い人間だったが、そのせいでひねくれて、偽善の真逆、偽悪を好んだ。彼はつねに仮面を着けていた」と。現代のスウィフト研究者は、スウィフトの性格をひと言で「韜晦(とうかい)趣味」と呼ぶが、その意味は上述のようなことである。
他方、現代の哲学者・中島義道氏が、差別に関する自著の「あとがき」に記した次の一節を読むとき、担当教員はどこかスウィフトに似たものを感じるのである。「われわれ(凡人)の日常生活においては、ささいなことで絶え間なく自分を誇り、ささいなことで絶え間なく他人を軽蔑し・・・、こうして他人を傷つけ、他人から傷つけられて生きるほかないという仕組みになっている。(中略)では、こうした『地獄』からの脱出法はあるのだろうか? 一つあるように思う。それは、完全に世を捨てることである。だが、それができない場合、せめて自分に対するわずかな誇りも他人に対するわずかな軽蔑も絶えず生け捕りにし、その醜い姿を心ゆくまで観察することを提唱したい。けっしてごまかすことなく、くたびれはてるまで、いやくたびれはてても・・・。そのうちに、自分の『汚さ』に悲鳴を上げたくなり、かてて加えて他人の『汚さ』までもよく見えてしまうであろう。きついことこの上ない。だが、それでいいのである。それが『誠実に生きる』ということなのだから」(『差別感情の哲学』「学術文庫版へのあとがき」より)。 担当教員は、世を捨てた(?)ような小説『ロビンソン・クルーソー』を書いたデフォーや上記スウィフトを、研究上の専門としている(それ以外にも、実はいろいろ研究しているが)。この授業では、差別というかなり重たいテーマを、中島氏の、かなりスウィフト的なアイロニーに満ちた、しかしデフォーばりに誠実な語り口に助けられながら扱ってみたいと思う。 【授業計画と授業の方法】
第 1回 ガイダンス
第 2回 何が問題なのか 第 3回 他人に対する否定的感情(1)不快 第 4回 他人に対する否定的感情(2)嫌悪 第 5回 他人に対する否定的感情(3)軽蔑 第 6回 他人に対する否定的感情(4)恐怖 第 7回 自分に対する肯定的感情(1)誇り 第 8回 自分に対する肯定的感情(2)自尊心 第 9回 自分に対する肯定的感情(3)帰属意識 第10回 自分に対する肯定的感情(4)向上心 第11回 差別感情と誠実性(1)まなざしの差別 第12回 差別感情と誠実性(2)差別語 第13回 差別感情と誠実性(3)誠実性(I) 第14回 差別感情と誠実性(4)誠実性(II) 第15回 どうすればいいのか テキスト・参考書
中島義道『差別感情の哲学』講談社学術文庫(2015年)
授業時間外の学修
成績評価の方法と基準
毎回の授業に対する準備、参加意欲、発言の積極性等を総合的に判断して評価します。
備 考
ディスカッションやプレゼンテーションの場では、単なる「レポート」(状況報告)にならないように、論点や疑問点を意識的に提示すること。
担当教員の実務経験の有無
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実務経験の具体的内容
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